万年3位のMSNBC。2009年も万年3位は変わらず、といったところか。
2008年に指揮がダン・エイブラムス(Dan Abrams)からフィル・グリフィン(Phil Griffin)に交代し、MSNBCの希望がくっきりと見えた。一方で2009年はMSNBCの課題が顕著になった年となった。
2008年9月にレイチェル・マドウ(Rachel Maddow)による『レイチェル・マドウ・ショー (The Rachel Maddow Show)』を開始。大統領選挙を2ヵ月後に控え、サラ・ペイリン登場で民主党の優位性が衰える中で始まった。マドウはリベラル派のトークラジオホストでMSNBCにゲスト出演することの多かった人物。番組を始めるまでMSNBCと契約を結んでいたわけでもないが、常連のゲストとなり、司会代理の経験もある注目されるだけの人気はあった。2008年6月、MSNBCの番組で保守派のジョー・スカーボロを言い負かしている。
マドウの番組はMSNBCにおいて久しぶりとなる正式なオピニオン番組だ。キース・オルバーマンがホストの『カウントダウン (Countdown with Keith Olbermann)』がオピニオン番組でないわけではないが、パーソナリティーが完璧なパンディットとして登場したのは久しぶりだ。
2007年までジョー・スカーボロ(Joe Scarborough)―現在は同局朝の番組を担当している―が、2008年3月までタッカー・カールソン(Tucker Carlson)がプライムタイムを担当、いずれも保守・リバタリアンの面々だった。そこにキース・オルバーマンやクリス・マシュー(Chris Matthews)のリベラル「っぽい」面子が加わる、そんな程度。しかし揃ってブッシュ政権批判など、捉え方が斜に構えるようになっている。
フィル・グリフィン体制となっての最初の大きな一手はマドウの起用だった。これでようやくリベラル路線へシフトしたことが明確になる。これは時期が良かった。選挙戦の最終盤に向かう9月、ケーブルニュース全体でレイティングが上昇する時期にマドウを登場させたのが正解だった。追い風にのるようにレイティングCNNのラリー・キングを捉えることが出来たのだ。勿論、万年3位をひた走る、これまでの歴史に無かったことだ。
『カウントダウン』が8時と10時(再放送)に放送しており、プライムタイム(8-11時)のレイティングでCNNに迫り、マドウがあと一歩で年間通しでラリー・キングを追い抜く所だった。そしてデモ(25-54歳)だけの視聴者数ではCNNを抜いた。デモは広告主が重視している世代として認識されているから注目を集める。2009年10月、アニタ・ダンがFox Newsは報道番組じゃないと言って物議を醸した時の事。オルバーマンがFoxがニュースでなく、MSNBCはプライムタイムでCNNを負かしているのなら、MSNBCがNo.1だとおちょくる余裕を見せた。
マドウの成功を受けてグリフィンは2009年1月、『カウントダウン』の再放送に充てている夜10時台に新番組立ち上げを示唆する発言をした。オルバーマン、マドウに続くリベラルパンディットの起用で3匹目のドジョウを狙おうとしたのか。結果として4月、6時のインタビュー番組『1600ペンシルベニア・アベニュー (Pennsylvania Avenue)』が終了し、ベテランのラジオトークホスト、エド・シュルツ(Ed Shultz)を起用した『エド・ショー(The Ed Show)』を開始させた。革新派の彼はこれを機にニューヨークに移住している。レイティングは決して良くない。シュルツの個性が弱いということか?それでも1年前まで同じ時間帯を担当していたカールソンより視聴者を獲得しているようだ。
オルバーマン、マドウ、シュルツ。夜間に3人が登場したことでMSNBCはリベラルバイアスがかかっていると見なすことが出来る―Fox Newsが保守バイアスと見なされているように。
一方で、2009年6月末に本格的にHD放送を開始。これに合わせる格好で昼間の改編に着手した、CNNに肉薄したいために。
しかし、露呈するのは結局のところ「MSNBCは強くなった。しかしそれはオブラーマンとマドウが強いだけで、他は相変わらずだった」という事実だった。
6月、9時-1時に新番組を投入した。11時まではMSNBCの姉妹局CNBCから移籍したディラン・ラティガンの『モーニング・ミーティング(Morning Meeting with Dylan Ratigan)』、次いで新進のカルロス・ワトソン(MSNBC Live with Carlos Watson)、医療記者ナンシー・シュナイダーマンの『ドクター・ナンシー("Dr. Nancy" Snyderman)』と続くが、残念な事に彼らを投入してレイティングは悪化した。秋以降は日中のレイティングでMSNBCはHLNとCNBCに負けて5位になる事が恒常化し、11月と12月はこの時間で月間で5位となった。
結局、9-1時は全てキャンセルとなった。半年で刷新をすることになったが、元々MSNBCが昼間に新番組を立ち上げて成功させた試しが無い。成功したというのなら2年以上続いたケースがあったろうか。個性を出さずにMSNBC Liveとして放送していた方が数字はいいのだ。ではアンドレア・ミッチェル("Andrea Mitchel Report")が長々続いているのは彼女のキャリアを重んじてなのか。
ラティガンは2010年1月から午後4時に移動して再スタートを切る。9時からはホワイトハウス記者のチャック・トッド(Chuck Todd)―2008年の選挙戦で名が知れるようになる―とサバナ・ガスリー(Savannah Guthrie)が担当する『デイリー・ランダウン (The Daily Rundown)』を開始させる。『ハードボール (Hardball with Chris Matthew)』のようなニュースサマリーとインタビューという体裁になるのだろうか?
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2008年に指揮がダン・エイブラムス(Dan Abrams)からフィル・グリフィン(Phil Griffin)に交代し、MSNBCの希望がくっきりと見えた。一方で2009年はMSNBCの課題が顕著になった年となった。
2008年9月にレイチェル・マドウ(Rachel Maddow)による『レイチェル・マドウ・ショー (The Rachel Maddow Show)』を開始。大統領選挙を2ヵ月後に控え、サラ・ペイリン登場で民主党の優位性が衰える中で始まった。マドウはリベラル派のトークラジオホストでMSNBCにゲスト出演することの多かった人物。番組を始めるまでMSNBCと契約を結んでいたわけでもないが、常連のゲストとなり、司会代理の経験もある注目されるだけの人気はあった。2008年6月、MSNBCの番組で保守派のジョー・スカーボロを言い負かしている。
マドウの番組はMSNBCにおいて久しぶりとなる正式なオピニオン番組だ。キース・オルバーマンがホストの『カウントダウン (Countdown with Keith Olbermann)』がオピニオン番組でないわけではないが、パーソナリティーが完璧なパンディットとして登場したのは久しぶりだ。
2007年までジョー・スカーボロ(Joe Scarborough)―現在は同局朝の番組を担当している―が、2008年3月までタッカー・カールソン(Tucker Carlson)がプライムタイムを担当、いずれも保守・リバタリアンの面々だった。そこにキース・オルバーマンやクリス・マシュー(Chris Matthews)のリベラル「っぽい」面子が加わる、そんな程度。しかし揃ってブッシュ政権批判など、捉え方が斜に構えるようになっている。
フィル・グリフィン体制となっての最初の大きな一手はマドウの起用だった。これでようやくリベラル路線へシフトしたことが明確になる。これは時期が良かった。選挙戦の最終盤に向かう9月、ケーブルニュース全体でレイティングが上昇する時期にマドウを登場させたのが正解だった。追い風にのるようにレイティングCNNのラリー・キングを捉えることが出来たのだ。勿論、万年3位をひた走る、これまでの歴史に無かったことだ。
『カウントダウン』が8時と10時(再放送)に放送しており、プライムタイム(8-11時)のレイティングでCNNに迫り、マドウがあと一歩で年間通しでラリー・キングを追い抜く所だった。そしてデモ(25-54歳)だけの視聴者数ではCNNを抜いた。デモは広告主が重視している世代として認識されているから注目を集める。2009年10月、アニタ・ダンがFox Newsは報道番組じゃないと言って物議を醸した時の事。オルバーマンがFoxがニュースでなく、MSNBCはプライムタイムでCNNを負かしているのなら、MSNBCがNo.1だとおちょくる余裕を見せた。
マドウの成功を受けてグリフィンは2009年1月、『カウントダウン』の再放送に充てている夜10時台に新番組立ち上げを示唆する発言をした。オルバーマン、マドウに続くリベラルパンディットの起用で3匹目のドジョウを狙おうとしたのか。結果として4月、6時のインタビュー番組『1600ペンシルベニア・アベニュー (Pennsylvania Avenue)』が終了し、ベテランのラジオトークホスト、エド・シュルツ(Ed Shultz)を起用した『エド・ショー(The Ed Show)』を開始させた。革新派の彼はこれを機にニューヨークに移住している。レイティングは決して良くない。シュルツの個性が弱いということか?それでも1年前まで同じ時間帯を担当していたカールソンより視聴者を獲得しているようだ。
オルバーマン、マドウ、シュルツ。夜間に3人が登場したことでMSNBCはリベラルバイアスがかかっていると見なすことが出来る―Fox Newsが保守バイアスと見なされているように。
一方で、2009年6月末に本格的にHD放送を開始。これに合わせる格好で昼間の改編に着手した、CNNに肉薄したいために。
しかし、露呈するのは結局のところ「MSNBCは強くなった。しかしそれはオブラーマンとマドウが強いだけで、他は相変わらずだった」という事実だった。
6月、9時-1時に新番組を投入した。11時まではMSNBCの姉妹局CNBCから移籍したディラン・ラティガンの『モーニング・ミーティング(Morning Meeting with Dylan Ratigan)』、次いで新進のカルロス・ワトソン(MSNBC Live with Carlos Watson)、医療記者ナンシー・シュナイダーマンの『ドクター・ナンシー("Dr. Nancy" Snyderman)』と続くが、残念な事に彼らを投入してレイティングは悪化した。秋以降は日中のレイティングでMSNBCはHLNとCNBCに負けて5位になる事が恒常化し、11月と12月はこの時間で月間で5位となった。
結局、9-1時は全てキャンセルとなった。半年で刷新をすることになったが、元々MSNBCが昼間に新番組を立ち上げて成功させた試しが無い。成功したというのなら2年以上続いたケースがあったろうか。個性を出さずにMSNBC Liveとして放送していた方が数字はいいのだ。ではアンドレア・ミッチェル("Andrea Mitchel Report")が長々続いているのは彼女のキャリアを重んじてなのか。
ラティガンは2010年1月から午後4時に移動して再スタートを切る。9時からはホワイトハウス記者のチャック・トッド(Chuck Todd)―2008年の選挙戦で名が知れるようになる―とサバナ・ガスリー(Savannah Guthrie)が担当する『デイリー・ランダウン (The Daily Rundown)』を開始させる。『ハードボール (Hardball with Chris Matthew)』のようなニュースサマリーとインタビューという体裁になるのだろうか?