2009年9月21日からCNNIはブランドイメージを一新した。2001年3月の「Be the First to Know」 に代わるスローガンとして「Go Beyond Borders」 を採用した。これまでは速報性や信頼性に重きを置いていたが、これからは境界を越えてゆく、というメッセージになる。それは視聴者の国境や宗教・人種などの境を越えるという事と、テレビ・インターネット・モバイルとプラットフォームを越えるというのにも兼ねている。
今回はスローガンの変更と共に、番組ラインナップの変更を行っている。その目玉がアマンプールの起用だった。CNNの海外取材における記者の代表格として、ドキュメンタリーの制作やCBS『60ミニッツ』の外部記者を任されるなど、内外において「CNNの顔」だったクリスティアン・アマンプール。彼女をインタビュアーに起用。9月21日に始まった『アマンプール (Amanpour)』は2009年の年始から計画されていた。週5日、30分の番組はアジア・ヨーロッパ地域のプライムタイムにそれぞれ放送。1回目はアジアむけ(8pHK/2pCET)で、2回目(3aHK/9pCET)はたまにアメリカ国内のCNNでも放送するらしい。ほか、週末に放送する1時間のダイジェスト版はCNNアメリカでも放送する。日本なら午後9時に放送する(冬期は午後10時)。
また、長らく『ワールドニュース』として放送していた定時ニュースも変更。ワールドニュースは『CNNトゥデイ』や『ワールドニュースアジア』など放送時間に応じて番組の細分化を行っていたが、これらすべてを『ワールドリポート (World Report) 』に統一。従前の『ワールドリポート』は『ワールドビュー (World View) 』と番組名を差し替えた。『ワールドビジネスリポート』もグラフィックを更新している。
スローガンの変更や『ワールドニュース』を廃止して新しいタイトルへ移行したのは大きな転換点を迎えた事を示唆する。
WR, Amanpour, WBR, ‘Go Beyond Border’ promo
2009年はCNNにとって久しぶりとなるテコ入れの年となった。年初にはCNNアメリカに倣ってグラフィックデザインを変更。段階的にヨーロッパのプライムタイムに新番組を投入。リチャード・クエストの『クエスト ミーンズ ビジネス (Quest Means Business/8pCET) 』(1月26日)、ハラ・ゴラーニの『インターナショナルデスク (International Desk/6pCET) 』(2月2日)、ベッキー・アンダーソンの『コネクト・ザ・ワールド (Connect the World/10pCET) 』(4月20日)とスタート。取材の裏側に迫る『バックストーリー (BackStory/11pCET) 』は2008年10月に開始している。
Quest, IDesk, Connect, BackStory
2008年以降、『ビジネス・インターナショナル』の放送回数が減少し、『CNNトゥデイ』など平日に放送していた番組名を週末にも放送する―が、週末は一貫してアトランタから放送する。中断して『ワールドスポーツ』を放送するなど、3時間ブロックとして放送する存在意義が失われる。それまでの『ワールドニュース』とはたいして変わりない。いろんな番組名を抱えるが、どこのスタジオから放送するか、アンカーが誰か、タイトルがどうかの違いに過ぎなくなってきた。だからか、『ワールドリポート』と番組名を統一したが、このタイトルは従前のものと重複する。CNNが提携関係を結ぶ世界中の放送局のニュースリポートを紹介する『ワールドリポート』は2001年の同時多発テロ以降に放送回数を多くしたが、その後平日から週末のみの放送になった。そして新たに『ワールドビュー』としてスタートを切った。
CNNの親会社タイム・ワーナーはアメリカ企業であって、本部CNNセンターはアトランタにある。しかし、無意識にいるとアメリカの価値観しか持ち合わせず、アメリカのプロパガンダに陥る。その為か、CNNIはアメリカナイズという偏見から抜け出そうとしている。
開局当時から100%自主制作をしていたわけではない。CNNアメリカの番組で埋め合わせをし、現在もCNNアメリカが制作するニュース番組を放送している。『ラリー・キング・ライブ』が古株で、2008年にはアメリカ政治ニュース『シチュエーション・ルーム』を開始した。
その一方で進むのは多極化だ。『ワールドリポート』―改名して『ワールドビュー』はアメリカ以外のニュースリポートを放送。ロンドンと香港にスタジオを置き、そこからヨーロッパ・アジアの朝晩のプライムタイムを狙って番組を組む。中東やアフリカをテーマにした番組もあれば、世界中を行き交うビジネスマンに焦点を当てた番組も作る。2000年からビジネスマン・トレーダーを相手にビジネスニュースを強化。この時にクエストが起用され、ロンドンスタジオが重要になってゆく。2009年にはヨーロッパのプライムタイムに新番組を投入、ベテランを相次いで起用した。
さて、CNNIのスローガンはビヨンドボーダー。CNNはボーダーを超えようとしている。壁であり、境界でもある。それはCNNが超えるだけではない。CNNと超えるのだ。誰と超えるのか?これが鍵だ。その特定の集団と共にしたら、その集団はCNNについてくる。まずは国際問題を意識する集団だ。常に国際情勢に関心がある人々が自国のニュースを見ずにCNNを見る。2009年の新番組たちはほとんどニュースリポートとインタビュー、二手から分析する。そういえば過去に『インサイト (Insight with Jonathan Mann) 』や『Q&A (with Riz Khan) 』などがあった、これらは30分番組で、今度は60分が多い。『アマンプール』はインタビューのみで構成するつもりだし、取材の際は現地でインタビューを数多く行うのだろう。
次に肝心なのがビジネスマン。中東やヨーロッパで国境を越えた市場で仕事するビジネスマンだが、彼らが率先してCNNを見るとは限らない。だからCNNは率先して番組を作るのだ。それがこれまで触れた番組群であり、他に『マーケットプレイス・ミドルイースト (Marketplace Middle East) 』がある。そしてCNNを世界中の主要ホテルで視聴可能できる。
前述したがCNNは2000年にビジネスニュースを強化した。ヨーロッパ/アメリカのマーケットに合わせて番組を編成した。この当時、視聴者数ではCNNIよりCNBCアジアの方が勝っていた。そうCNBCアジアが宣伝していたのだが、ヨーロッパは分からない。経済専門のCNBCの戦略には需要があり、成立する。だからCNNIはビジネスニュースに乗り出した。しかし、イラク戦争がひと段落し、ビジネスニュース路線は後退していった事を、 YouTubeのコメントでおちょくられている。『ビジネス・インターナショナル』のオープニングを投稿したjameshhjhが「(CNNは)ビジネスというけど、ビジネスニュースがない」というが、実際にそのとおりだった。ビジネスニュースの頻度が低下していったので『インターナショナル』は2008年に番組名を変更している。
Business International
CNNIの改編はひとまず終わったことだろう。アジアのプライムタイムは『アマンプール』の先行放送があるくらいか。ジム・クランシーが『The Brief』として再スタートしていているが、これがアジアプライムにあわせたものか、微妙でもある。
The Brief (2009)
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