WWFの9/11
アリコジャパンの1ヶ月のCM自粛も9月4日で終わり、AC公共広告機構のコマーシャルの出番は減った。ACは非営利組織のCMを放映することが多い。その中でWFP世界食糧基金が出稿したCMはシリアスすぎて不評だった過去がある。シリアスは世間受けが悪い。
6月に出稿したWWF世界自然保護基金のCMは2001年9月11日にニューヨークで起こった航空機テロを題材にしたCMだった。
ヘリコプターの空撮という前提でCGを制作。ワールドトレードセンターに航空機が衝突する様子をCGで再現、暗転して「2001、2,819人が死亡した歴史上最悪な悲劇のひとつ」とテロップが出る。再びニューヨークの空撮に戻って煙立ち込める様子をCGで表現していると、背後から航空機が飛び出してきて摩天楼に襲い掛かる。それも数えるのが面倒な位に。再度暗転してテロップは「2005、津波が280,000人を殺した。100倍以上の死者だ」と告げる、そして「私たちの星は残酷で力強い」「尊べ。守ろう」「WWF」とテロップが続く。
この映像はウェブサイトで話題となった。新進のニュースサイトMediaiteで取り上げていて、YouTubeにもアップロードされたいたが、10日現在は削除されている。MediaiteはブログサイトAdFreakを引用しており、いまのところ広告を視聴することが可能だ。
ことの成り行きはさておき、問題点は9月11日を前にしての広告だったという事、それを前提にしても9/11は未だにセンシティブな事件だという事が露呈した。ただ、この広告はWWFのブラジル支部が制作したCMだった。温度差は確実にあるのだ。
ノーム・チョムスキーが日本人が制作したドキュメンタリーで語っている事は非常に的確に、ダーツで喩えるなら60点か54点の的を得ている。あまり引用はしないが、感想文としてかくのなら、南米のたとえばパナマでは空爆がアメリカからもたらされている。もちろん内戦のテロもあるわけで、テロは当たり前のようにすぐそこの危機として存在する。
しかし、アメリカはそうではない。彼らは空爆をしても専守防衛戦争を起こしても、敵陣に攻撃を仕掛けるのでテロを犯している意識はない。チョムスキーの言葉を引用すれば「悲劇は他国で起こっている」だけで、アメリカ国内では起こらない。それが帝国主義とリンクする。だから、他国で起こる筈の悲劇が帝国内で起こったから、他の帝国も慌てふためいた。もちろん日本もだ。
日本は帝国かという論題になれば、アメリカを打ち負かす帝国は今のところ無さそうなので帝国でないかもしれない。しかし、「悲劇は他国で起こっている」、決して他国からそのような悲劇がもたらされないとたかを括っていた国と人が慌てふためいただけのことであった。
だから、他国で起こったことなんて他国の人たちは知った事ではないのだ。WWFのブラジル国内で発注した広告がアメリカ国内を犠牲にしようがしまいが構わない。そういうことだったのだ。
その上で、私がこの広告を見たとしたら。
ニューヨークのテロとスマトラの津波を同等に考えたら100機飛んでくるのは別に間違ってはおらず、ただ、ニューヨークでは一度で2819人が死んだ、アジアは280,000人が死んだだけで、等式を当てはめたら100機飛ばすのが正解だった。ただ、それだけである。遺族感情を言うなら、ニューヨークもスマトラも一緒じゃないか。
ニューヨークのテロの被害者/犠牲者の立場にたってCMをみると、100機の航空機を飛ばすのはナンセンスだとなる。津波の被害者/犠牲者の立場にたってCMをみると、そうやって非難してニューヨークの事件を崇高高くしようとしている事がナンセンスだとなる。
あれからもう8年が経った。テレビニュースの歴史を変えた出来事。今年もMSNBCではNBCが9/11に放送した映像をNY時間8時45分から3時間ほどかけて再度、ノーカットで放送する。2期目の衝突やペンタゴンの被害、タワーの崩壊とあの日に起こったこと、テレビが映したものを8年前と同じ時刻で再放送してゆく。2001年9月11日の様子を追体験出来るという企画、2006年にも実施したことだ。
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