2009年12月15日深夜、CBSの深夜トーク番組『レイトレイト・ショー ウィズ クレイグ・ファーガソン (The Late Late Show with Craig Ferguson)』が放送1000回を数えた。
#The Late Late Show
レイトレイト・ショー自身は1995年に始まった。1993年に始まった『レイト・ショー ウィズ デビッド・レターマン(Late Show with David Letterman)』が軌道に乗り、CBSとレターマン率いる制作会社であるワールドワイドパンツは深夜トークをもうひとつ、『レイトショー』に続いて放送することにした。
初代ホストはニュースキャスター/インタビュアーとして知られるトム・シュナイダー(Tom Snyder)で、コメディ色の薄いトーク番組として放送。1999年、コメディ・セントラル『デイリー・ショー (The Daily Show)』のクレイグ・キルボーン(Craig Kilborn)が司会となる。
シュナイダーは深夜トークだがコメディではない。キルボーンはアメリカのよくある深夜トークのフォーマットを踏襲した。オープニングのモノローグトークあり、『デイリー・ショー』でもしていた時事ニュースの風刺/スケッチもあり、有名人へのインタビューも盛り込む。キルボーンはシュナイダーに比べれば安定した人気があった。CBSも首を斬ることは考えていなかったろう。しかしキルボーンは5年経って降板する事を決めた。
CBSは後任を決めていなかった、それよりキルボーンが降板するとは考えていなかった。9月から年内一杯を後任探しと準備期
間に充てる事にし、選ばれたのがファーガソンだった。
2005年1月にスタートして足掛け5年。年間200本制作し、10週は休むパターンでやってきた事になる。スタンダップコメディは継続していて全米を回るし、出版の宣伝やサイン会の為にNYへ出張する。
レイティングでは同じ時間に放送するライバル、NBCの『レイトナイト ウィズ コナン・オブライエン (Late Night with Conan O’Brien)』がリードしていたが、ファーガソンは確実に視聴者を増やしてNBCと肩を並べるまでになった。2008年4月には初めて週間のレイティングで追い抜いた。NBCは2009年にホストの繰り上げを行い『レイトナイト』はジミー・ファロン(Jimmy Fallon)がホストを担当している。2009年末時点ではファーガソンの『レイトレイト』がリードしている。
#見劣りするもの
『レイトレイト』はワールドワイドパンツが制作する番組だ。レターマンはNYのエド・サリヴァン・シアターで収録するが、『レイトレイト』はロサンゼルスで収録する。キルボーン時代からそうだったというのと、LAの方がゲストブッキングに苦労しないというのもある。しかしながらレイティングが低いからか歴史の浅さ故か、予算の少なさは否めない。深夜トーク特有というか特徴とやらがある。『レイトレイト』にはそれが無い。ハウスバンド(生バンド)が無いし、1週間単位でみたゲストの総数が少ない。スケッチやスタントも少なく、「トップテンリスト」や「ヘッドラインズ」みたい作家泣かせの定番コーナーも無い。収録するスタジオも小さい、ロサンゼルスには大きなスタジオはいくらでもあるのに。HD放送についてはCBS自体が他より遅れ気味だが、それでも今年7月にようやくHD収録を開始、その収録分は8月末から放送している。タイトルコールのアナウンサーもいるが、毎回アナウンサーがスタジオ収録に臨む他番組に比べ『レイトレイト』は同じフレーズの使い回しでしかない。ライバルの『レイトナイト』はバンドも生アナウンスもHDも採用しているが、スタジオは旧いロックフェラービルの中なので縦長に狭い。
それを打ち負かすのはファーガソンのキャラクターなのだろうか。番組の進行フォーマットに沿って考える。
#Cold open
まずはコールドオープン。番組はオープニング映像より先にイントロダクションがあって、CMを挟んで本編が始まる。本編前にCMを消化する、日本では知り尽くされた手段をとっている。デスクには座らず、多くはモノローグ同様にトークでひとネタ喋ってCMとなる。たまに本編の感想・反省を述べる―つまりは予告の一種―、パペットを使って芝居を打つ、ヒット曲に合わせてスタッフ共々踊る―これは良く出来ている―など、いろいろと遊びを見せている。
#Show and tell
で、本編が始まる。そういえば歌詞の付くテーマ曲はここだけだ。前任のキルボーンも歌詞が無いテーマ曲を使用していた。作詞はファーガソンだ。歌が流れてアナウンサーによる呼び込み―使い回しのもの―があり、ファーガソンが登場する。
モノローグの時はデスクセットを隅に追いやり、ファーガソンはカメラに近寄る。スタジオに奥行きを見せる事が出来るが、異様に近い気がする。スタジオが小さく奥行きが無いから、でもある。また、カメラポジションが高めで見下ろすように設定して、広角で撮影している。監視カメラのような
一方、こういう事も考えられる。トーク番組で、一人で喋るにしても相槌をうつ誰かを必要としている。漫才で言えばツッコミだが、ツッコミは必要としない、同意が要るだけだ。レターマンはハウスバンドのリーダー・ポール・シェイファー(Paul Shaffer)に意見を求めるし、ABCのジミー・キメル(Jimmy Kimmel)は警備員がいつの間にかそのポジションに居座っている。
それがファーガソンの場合、いない。スタジオにハウスバンドもアナウンサーもいない、スケッチに登場する裏方はいるが相槌役では登場しない。そうして担う事が想定出来るのはスタジオの観客となる。実際のところ、モノローグやコールドオープンでは、ファーガソンは観客に向かうというよりかカメラに向かって喋っている。講談師が叩くようにカメラプロンプターを叩く。そして、ジョークをかました時に視線を斜めに―観客に向ける。
#e-mail/sketch
モノローグがあり、視聴者からのe-mailのコーナーがある。ファーガソンはデスクに座り、ラジオ番組のはがきコーナーよろしくe-mailを紹介し、ファーガソンがコメントする。一方で前述した様にスケッチは少ない。話数が多いのは1000回目でも放送した「ディア・アクアマン」などか。その代わり(?)ラリー・キングなどの変装キャラは多い。よぼよぼのお爺さんみたく相当デフォルメしているが、互いの番組にゲスト出演する間柄なので大人なのだ。
#Guest
ゲストが少ないのは予算とこれまでのレイティングから照らし合わせれば致し方ない。毎晩ミュージシャンが1組登場するのが常だが、毎日ではない。どうも別撮りが多いようだが、かといってジミー・キメルのようにライブハウスみたいな小屋をこしらえて雰囲気を醸すとか、そういう事もしない。それ「をしない」のか、それ「ができない」のかでは意味合いが違ってくる。
#What did we learn on the show tonight, Craig?
番組の終わりは「きょうの成果は?」と締めのコーナーがある。オープニングで子猫の映像が出てきて、その猫がギャグをかますのがメインと言っていい。絶対にその日の感想を言う必要はないので、CM消化のための時間稼ぎでしかない―30秒で締める事が多い。タイを緩め、足をデスクに放り出した、眠いのか酒を呑んだか「どうでもいい」クレイグが登場し、「じゃあね」といって終了する。ではなぜああいうエンディングなのか?彼が昔アルコール中毒だったからだろうか?というかアル中だった事は番組でネタとして使っている。
重ね重ね言うが、ライバルに比べて明らかに予算が少ない。それをカバーするのがファーガソンのキャラクターといえる。スコットランド出身でアメリカ英語を母国語とするアメリカ人からすればきつい訛りに聞こえる。変装キャラクターがそうだが、パフォーマンスも濃い―その反対はレターマンといえる。見る者を中毒にさせる魅力を持っているという事か。
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