2つの放送局の2度目の転向、それは死亡宣告と言われるかもしれない。
10月1日、刻まれる出来事が相次ぐ。午前0時をもって名古屋市に本社を置く RADIO-i (愛知国際放送)の放送は終わりを告げる。もう、2度と79.5mHzから電波は発せられない。 Kiss-FM KOBE は倒産、清算することとなり、上下分離方式によって新会社「兵庫エフエム」が放送事業を継続する。そして福岡の LOVE FM (九州国際エフエム)は年内にも放送事業を天神エフエムに譲渡される予定で、正社員は再就職支援を受ける事を条件に解雇に応じた。
さて、今年4月には FM COCOLO (関西インターメディア)がFM802の支援を受け入れる形で大きくリニューアルした。それまでのCOCOLOファンにとっては死亡宣告だったろう。FM802で活動した顔ぶれで占められているからだ。生き残ったのは僅かなDJと15%の番組だけだ。
ブロガーであるエリック・ミヤガイのブログはこの半年間、COCOLOを軸にこの20年のFMラジオについて、とても深い洞察を行った。私自身知らなかった事が多い。
前以て言うべきこととして、私自身は地理的にKissを殆ど聞かずに育った。自宅や生活圏内に大阪の放送局の電波は辛うじて届いたが、神戸の電波は届かないのだ。だからKissが独立放送局として歩んだ日々を殆ど知らない。新聞のラジオ欄でしか。
2003年4月1日。
独立放送局だったKiss-FMはJFNに加盟した。これにより自社制作番組は大幅に削減された。
これはKissにとって「ひとつの死」だ。このままでは経営が立ちゆかない、と。深夜早朝あるいは週末の番組で広告費という名の支援を受け、制作費を圧縮する。それだけでも経営はよくなるだろう。
この改編を乗り切った、平日夜10時に冠スポンサーがいる帯番組があった。但し、放送時間を2時間繰り上げ午後8時からとした。JFNから配信される三菱自動車の帯番組を放送できるように。しかし、三菱自動車のCMが流れることはなかった。番組を放送することも出来なかった、ローソンを移動させたのに。この時からKissの第2の人生は波乱しか無かった。
この日、奇妙な一致がある。
FM COCOLO が他局みたいな編成を行ない、BBCワールドサービス(ラジオ国際放送)の購入を始めたのだった。それまで昼間に放送していた国・言語別番組は押しなべて夜に移動した。
エリック氏のブログを読むまで知らなかったのだが、Kissのスタッフがこの改編の際にCOCOLOに移籍したというのだ。同時にKissのリスナーの中にもCOCOLOへ移った人もいた、と。だから垢抜けたのだ。
これはCOCOLOのひとつの「死」だったのだ。
COCOLOが手弁当だった頃から聞いていて、確かに2003年4月の改編で垢抜けたのは聴いてる人にとって判り易い。補足するならば、2003年に夜8時以降に集中させたCOCOLOの国別・外国語番組群は放送時間が削減の一途を辿った。日中に放送していたワールドニュース(英語)やカンサイスコープ(ハングル・中国語・英語)も終了した。「Kissのリスナー」という意味でキスナーと呼ばれる聴取者や制作者をCOCOLOにやって来たことは正しかったのか。YESともNOとも言いきれない。心臓移植して拒否反応がなかった点においてはYESだろう。しかしKissの焼き直しを聞きたいのではないのだ。
もう一度心臓移植するまでに7年の月日を要した。
COCOLOがFM802に丸投げしてしまった、経営陣や幹部が。7年かかって外国語番組は姿を消していった。「ななろくご」と呼ぶようになった頃には外国語番組は朝30分、それも終了が相次いだ。バングラデシュのどこに興味があるのかと思われるかもしれないが。英語DJが全てじゃないし、そういっても外国人は放送で日本語を喋っているが。
そして802の焼き直しは明らかにCOCOLOらしさを失うようだというのでオンラインを中心に抗議活動が行われたのだ。85%の改編はKissがJFNに加盟した際と同じイメージの塗り替えであり、血液型が違う臓器の移植は拒否反応を起こすには条件が良すぎる。
2010年10月、Kissは2度目の死亡宣告を受ける。1度目は蘇生したが、今度は正式な死だ。倒産したのだから。
これには長年経営を携わった平沢正博の責任は大きい。粉飾し、会社を私物化した。
それで、結局は上下分離方式でKissは無かった事にして、兵庫エフエム放送という新しい「うつわ」に移植することを選んだのだった。
新生KissはCOCOLOの10年4月改編と違い、全面的な改編を行う事はしない。新社はJFNに加盟する事を前提としており、旧社に言い渡されていたJFNからの放送番組の配信停止通告と、その通告の執行猶予は新社のJFN加盟の為の口実だったのかと疑いたくなる。
2003年と2010年。2つの電波は2度の「転向」を経験した。
その転向は人によっては蘇生と捉えるかもしれないし、新たな芽吹きと考えるだろうし、死亡宣告ないしは死とみるだろう。
誰の為の放送局なのかと考えさせる転向が4度起こった。なんなんだろう。2度も死ねるもんなんだな。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 buzz:
コメントを投稿