オバマに対する攻撃は多い。前のブッシュに比べたらまだまだ小さいかもしれないが、「社会主義」とか「共産主義」とか「白人差別主義」とか言われたい放題である。
CNNと創立時から携わる、ルー・ダブス (Lou Dobbs) もそのひとりだ。「出生地 (Birther)」問題について触れ、「ケニア出身じゃないの?」と言って、ただ、この事が反発を買って騒動になってしまった。人権団体がダブスの降板を求めるメールを送ったのだ。CNNで放送している『ルー・ダブス トゥナイト (Lou Dobbs Tonight) 』へだ。国内向けCNNのプレジデント、ジョン・クライン (Jon Klein) は火消しに躍起でTCAで「ルー・ダブスのラジオ番組はCNNが制作しているものではない」と発言、行われた記者とのやり取りで「ダブスはCNNの番組で明確にオバマはハワイ出身のアメリカ市民に間違いないと発言している。・・・詮索しているわけではない。・・・CNNに関しては終わったこと(dead issue)」とアピールしている。確かにルー・ダブスのテレビ番組はCNNが制作しているが、ラジオ番組はCNNが制作しているわけではない。物議を醸したあと、CNNの放送で「出生地」問題に触れざるを得なくなったとき、「ケニア出身」には触れずにいる。CNNにとっては関係ないラジオでの発言で危険な目に遭うのは困る、ぜひとも無かった事にしたくてクラインの発言となった。
そうなのだ、ダブスの発言は彼のラジオ番組においての発言が端を発しているのだ。
2002年、ダブスはエンロン事件でも物議を醸した(TV Asahi America 参照)。保守派とされているが、自身を「Mr. Independent」と名乗り、保守/リベラルとも距離を置いている。著書では2008年に近著となる『Independents Day』を出版している。
CNNの自身の番組では記者リポートやインタビューの比重が多く、主張”めいたこと”を自身が発言する機会は、他局のアンカーに比べればまだまだ少ない。
2008年には8月最終週の民主党全国党大会・9月第1週の共和党全国党大会に続く形で、9月第2週に特別企画Convention of Independent を開催。外交・ロビー活動から教育までこれまで取り上げていたトピック―キーワードとしてこれまで使用してきたBroken GovernmentやWar in middle classなども用いる―がテーマ。NYスタジオでの放送では観客を招きいれ、独立派議員へのインタビューなどを放送。水・木はワシントンDCから、最終日はバージニア州のFreedom Valley High Schoolからの放送を行った。月曜はメディアバイアスにも触れている。
ダブスは「独立派」を標榜するが、アメリカの選挙は概ね共和党か民主党の候補者に票を投じることになる。時折ラルフ・ネーダーなども登場するが。共和/民主、保守/リベラルのどちらにも属さない人たち、日本語でたとえるなら「無党派」は3割程度いると考えられる (Zogby Internationalの2008年選挙後の世論調査を参照) 。Middleが日本でどう解釈されているかはさておいて。クラインの発言からも、CNNはFNCやMSNBCとは違うことをアピールしている。右でも左でもない。だから来てもらう時は両方来てもらうと言いたいのだろうか。第3の男はこのあとしばらくは一匹狼としてやっていく事になりそうだ。
UPDATE: そして、一匹狼は本当に一匹狼になった。11月11日、ポッキーの日に放送内で降板を宣言した。ラジオ番組は続けてゆく。ただ、この騒動以降、ダブスがFoxに行くうわさがあり、16日にはFox Newsの『オライリー・ファクター』にゲスト出演し、インタビューを受ける。
#Birther 問題
オバマが生まれたのはハワイ州となっているが、ハワイ州政府に出生記録が残っていないというもの。これは曰く付きであって、2001年にペーパーレス化されている。ここに出生地疑惑の反対派に反論の余地がある。
結果、選挙期間中に生まれてオバマ支持層の切り崩しを図ろうとしたのだろうが、この疑惑やオバマの宗教観論争も含めてすべて、保守的な経済戦略レーガノミクスの足踏み(リーマンショック)でオバマを当選させてしまって、保守陣営も「どうでもいいこと」になってしまった。
一方で、「出生地/Birther」問題は「右派の一部が」いずれまたぶり返すだろう。オバマは母方が白人(で、ハワイ在住だった)で、父方はケニア出身留学生の黒人(つまりアフリカ系アメリカ人1世)で、奴隷制度の頃に連れて来られたアフリカン・アメリカンとは異なる。このことでたとえば白人やヒスパニックは「彼は黒人」と拒絶し、黒人は黒人で「彼は白人の血が流れている、父も留学生で奴隷移民でないから正当なアフリカンアメリカンでない」という拒絶をもたらしている。そんなルーツがあるから「イデオロギーや世界観で対立する両者を繋ぐ役割」を期待され、それに携わる仕事をこなしてきた(と書くのは誇大評価か?少なくともロースクール時代の仕事はそうだった)。オバマを人種として嫌う人物は明らかにいる。オバマを人種として嫌う人種だ。その断絶と接してゆかなければならない。イサム・ノグチの事を、ピースセンターの話などを思い出しながらそう思うのだ。
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