テレビ東京が放送した参議院選挙特番『池上彰の選挙スペシャル』は最初90分の視聴率が9.3%でNHKと日本テレビに次ぐ視聴率を記録した。今回限りかもしれない、だから良かった番組だった。後半では池上彰の解説が好きだから故に思う不安について触れる。
「公明党の支持母体は創価学会です」
武田広のナレーションと共に埼玉選挙区での公明党の街頭演説の様子を放送し、その演説にも顔を見せた山口党首に中継インタビュー。
正直言って『池上彰の選挙スペシャル』を全編見ていないし、録画出来ていない。ザッピングしていたら偶然「日本における政教分離」(という単なる公明党アレルギー)について、正統な「政教分離」とは何かを放送していた。
翌日、関西地区の視聴率を調べようと検索すれば、テレビ東京の選挙特番は好評のようで、中には池上彰を神扱いしている人物がいた。組織票の話から創価学会の話、そして宗教の話へ展開した。これが画期的なのだ、公明党を創価学会との関係を明示するテレビ番組を捜すのが至難の業だからだ。
公明党が創価学会と共にあるのは常識となっているのではないかという前提条件があって、それを見て見ぬふりしている。同時に創価学会と機関新聞である聖教新聞が大量の広告出稿をしているのも事実で、「だから」見て見ぬふりしているのではないか、そう怪しむ事が出来る。「だから」溜飲を下げてくれて、神になられるのだ。
私が子どもだったころ、池上彰の『週刊こどもニュース』が始まった、16年前の事だ。ニュース解説の書籍が注目を集め、この2年で池上流テレビ解説が好評を得ている。『選挙スペシャル』はその集大成なのかもしれない。
創価学会をネタにできるのはあの時だけ
選挙について考えることが許されるのは選挙の時しかない。ワールドカップの時にサッカーの事を喋っても阻まれないし、大相撲の興行直前だから大騒ぎすることが許された。不自然なく、あるテーマに耳目を引くことが可能であれば、イベントの開催に関係されないで済む。しかし選挙がなければ創価学会の事を真剣に掘り返すだろうか?選挙があるから許される。しかし、それを毎回放送することまで許されるかは別の話だ。
池上流解説を引き継いだ『週刊こどもニュース』はお父さんが取っかえ引っかえおかあさんと子供たちをスワップしたから、全く別の家族を招聘した。その家族も離婚してシングルマザーと再婚した。それだけの歴史があるけれど、毎週の放送であらゆるテーマを扱うから新鮮さを失わない。また、物知り父さん(講師)が家族(生徒)に教えるという図式があって、その生徒が勉強を重ねて卒業し、新入生を迎え入れるから講師と生徒の関係性は維持され続ける(放送業界でよく使う卒業でもある)。この生徒はテレビの前のあなたでもあって、あなたは毎週ひとりの講師から勉強を重ねることで知識を積んで、飽きるかもしれない。実際には勉強範囲はとてつもなく幅広い。しかし講師は基礎問題と応用問題を上手く織り交ぜて飽きさせない。
今回、選挙について基本のキ、イロハのイをテーマに扱った。組織票があるから族議員なんて存在もあった。JP労組が民主党から議員を送り込んだ今回、国民新党の存在意義はぶっ壊れた。ただ、1回目は基礎練だけでも楽しい。2回目以降は池上彰が持つパーソナリティーのみに頼るしかない。半年以内にまた選挙特番しなくてはならなくなった時どうするか。そうでなくても毎回創価学会をネタにしても、基礎練だけでは飽きられてしまう。基礎練のメニューは他にもいっぱい、しかし9%の視聴者が前回も見たという前提で作る、そうしかねるのは明らかだ。
『なんで投票しないの?』という先例
全国ネット番組で忘れてならないのが日本テレビの存在。1990年代はナイター中継との相乗効果で高視聴率を記録し、1996年は日本シリーズ第2戦(もちろんジャイアンツ戦)を放送して43.8%を記録。この時に進化させたL字型画面での速報をウリとして1998年の参議院選挙でもナイター同時放送を行う。L字のグラフィックデザインと番組ロゴ「Decision」は知的に、72面の超横長マルチやバーチャルCGによる開票速報&分析・・・という演出。一方で投票率低迷を受けて『なんで投票しないの?』をテーマにするVTRを作り、スタジオにはタレントの山田まりあが投票しない世代として出演、バラエティーの要素を取り入れた。『なぜ投票しないのか』をフランクに語るという設定、ついでに言えばだからテリー伊藤など政治評論に関しては素人を起用したが、現在も日本テレビは人選に奇抜さを求めるが、それは1度しか効かなかった。
2000年の衆議院選挙では優香を起用して第2弾を放送したのだが、ブービーに終わっている。ということは1998年は企画力で勝ったのではなく、野球中継のおかげだったのか?という可能性が出てくる。結果としては2001年の参議院選挙にテリー伊藤は生き残るも『なんで投票しないの?』は姿を消す。
池上特番はバラエティーらしく編集したVTRもあったし、「バスツアー」はバラエティー番組の発想法かもしれない、しかし基礎問題と池上が進行を進める形式は、日本テレビの『なんで』が応用問題と皮肉としてのバラエティー化とは明らかに違う。だから日本テレビは2匹目のドジョウは無理だったのだろう。
池上彰ファンのジレンマ?
テレビ朝日の『学べるニュースショー』6月2日放送分では生放送に差し替えて鳩山由紀夫の辞意表明演説をとっかかりに、戦後政権の内閣任期について解説した。この時急遽VTRを発注したそうだが、間に合わず、結局自分で仕切って時間配分までこなして綺麗にまとめた。それだけの技量を持ち合わせている。
次の国政選挙まで池上彰を欲しているかは判らない。池上彰はどこでも池上彰であり続けるのだから、もし第2弾を放送するのであれば、この時がテレビ東京と池上彰という組み合わせの相性と真価が問われる事になる。しかし純粋に彼のファンであるならば、消費財としてのブームはそう長くは続かないことを恐れる。池上彰は専門家 (analyst) やコメンテーター (contributor) とは違う。しかしブームとして過ぎ去り、テレビやラジオでの仕事量がある程度の範囲で収まれば彼がNHKをやめた最大の理由である取材 (correspondent) 活動が出来るのではないかと期待できる。どちらを期待すればいいのだろうか。
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