2009年6月26日午前7時(以下、全て日本時間)、自宅にて母が私に「テレビで、マイケル・ジャクソンがロサンゼルスで死んだ」と告げた。寝起きだった私が実際にそのニュースに触れたのは8時からの『とくダネ!』(フジテレビ制作)だった。すぐにパソコンからインターネットを閲覧すると、アメリカ・ロサンゼルスのKCBS(CBSが直接経営するCBS加盟放送局)とイギリスのSky News(Foxニュースを参加に持つニューズ・コーポレーション運営)がインターネットで同時放送を行っていた為、私はこれらとザッピングをしている自宅のテレビと、3つを並行して視聴した。
TV Newserの報道によると、マイケル・ジャクソンが倒れたという情報がテレビニュースで明らかにされたのはFox News(以下、FNC)によるもので日本時間の5時48分。午前6時を過ぎてCNNとMSNBCもこのニュースを伝えている事が分かる。その後、7時を過ぎてロサンゼルス・タイムスが死亡を確認したと報じ、ケーブルニュースは相次いで死亡のニュースを速報。ネットワークは夕方のニュースを流す前にスペシャル・リポート(報道特別番組に相当)で短く触れた。http://bit.ly/1U9Ypq
ロサンゼルスを拠点に置く地元放送局の状況は分からないが、ケーブルニュースがそれら地元メディアの映像にも頼っていたことから、ケーブルニュースの報道に相次いだのではないかと想像する。
日本の場合、『ズームイン!!SUPER』(日本テレビ制作)での第一報の速報が6時30分過ぎ。他の放送局は総じて7時前後に第一報を放送している。
まず、『とくダネ!』はニュース番組ではなく、いわゆるワイドショーに分類されて、情報制作局が製作の指揮をとる。報道局から記者が出演し映像を提供して貰う事で、政治や海外のニュースを放送することが容易になっている。イラク戦争でワシントン支局から支局長が毎日リポートとコメンタリーしていた、というのが好例。26日の『とくダネ!』はキャスターの小倉智昭が全体の進行を見ながらスタジオ出演者を束ねるモデレーターとなり、キャスターの笠井信輔と、特別に水曜日コメンテーターのデーブ・スペクターがいつもの場所―スタジオセットの一角にある、プレゼンテーションを行うスペース―に並んで立って、情報整理や補足コメントを行った。追記なぜデーブ・スペクターがいたのか。その日の放送がたまたまハリウッド関連の話題でスペクターの入手情報を取り上げる予定だった。
番組開始から1時間15分間、マイケル急死のニュースに費やした。番組ではアメリカから中継を行い、ニューヨーク支局からはフジテレビのディレクターが最新ニュースをリポート、マイケルが運び込まれた病院の前には現地の日本人(少なくてもフジテレビやとくダネ!の記者ではない)が電話で周囲の様子をリポート。地元のテレビ局による、病院上空で旋回するヘリコプターからの中継も随時放送した。地理上の問題―取材するにもすぐに行くことが出来ない問題―で、映像の殆どはアメリカの報道機関が配信したものを使用しており、病院に搬送される映像や自宅周辺の映像などを放送。一方で、小倉が中心となって、自身の知識を駆使してこれまでの経歴を簡単に口頭で振り返った他、過去のミュージックビデオや自宅などの映像を資料映像として放送した。
KCBSは26日(現地時間では25日)はこのニュースで持ちきりとなった。通常のローカルニュースを3時間ほど繰り上げ特別番組として放送を行った。ヘリコプターの中継でマイケル・ジャクソンが搬送された病院に上空を映し出す。リポーターは病院周辺からの報告を行い、キャスターは専門家に死因についての説明を受ける。どれもヘリコプターの映像を絶えず映し出した。また『とくダネ!』では出来なかったロサンゼルス市街での街頭インタビューを幾つか放送。状況が落ち着きだすと最新情報の他はインタビューを主体に放送。また、30分サイクルで番組進行を進め、初めにブリーフィングを紹介した。KCBSはローカルニュースを独立局扱いのKCALでも放送し、KCBSよりKCALが1日におけるローカルニュースの放送時間が長いのだが、当然のようにKCALでも放送していた。
イギリスのケーブルニュースであるSky Newsもマイケル・ジャクソンのニュースを延々と放送し続けた。イギリスは夜10時以降に第一報を伝えた格好になる。ブレーキング・ニュース(日本のニュース速報に相当)に力を入れるSkyはイギリス国外にもサービスエリアを持つが、日頃はイギリス国内に向けたニュース内容で編成。姉妹関係にあるFNCを通じて映像入手や生中継を放送したりしたが、FNCのグラフィックデザイン―字幕スーパーなど―をそのまま放送した。
放送で使用した映像に関してはヘリコプター中継の映像はKCBSやSky Newsが多く放送されており、画面を2分割するなどして延々と放送した。対して『とくダネ!』はスタジオ映像や資料映像が多かった。8時45分頃、ニューヨーク・アポロシアター前ではマイケル
ロサンゼルスでは9時15分から病院前で会見が予定され、実際は30分遅れて警察署員が会見を開いた。これらはKCBS・Sky Newsは中継したが、『とくダネ!』は放送されなかった。病院前のリポーターはまもなく開かれるとコメントしたが、ニューヨーク支局から10時30分に別の会見があるとの情報がもたらされていた為、スタジオ出演者は未確認情報との認識で扱われた。放送しなかった理由として考えられるのは、これら会見は重要と判断しなかったのか、英語通訳の人材が不足していたか、フジテレビにそういった映像が伝送されなかったかである。
今回の場合、日本では競合する午前のニュース・ワイドショーで最も多くの時間を割いている。合計して1時間半に渡ってマイケル・ジャクソンに関するニュースを伝えた。突然始まったニュースに関しての現在進行形で伝わる事実はとても少ない。NHKの26日午前8時30分と10時のニュースのように短時間で片付いてしまう。短時間で片付く情報だけで1時間30分も放送するのは視聴者に飽きられて他のチャンネルに移るだけ、となる。『とくダネ!』が1時間30分も放送出来たのは、放送内容が空っぽにならないだけの知識を保有していた事が大きい。事実として、スペクターが番組内で毎週海外の芸能ニュースコーナーを扱っている事、小倉が映画や音楽に明るく批評コーナーを担当した過去がある事、番組内で明かすが小倉とスペクターが中心になってマイケル・ジャクソンに関するドキュメンタリー番組を司会した事など、番組とマイケル・ジャクソンは他の番組より造詣深い存在としてあり、スタジオトークに多くの時間を割くことが出来た。だから放送時間で他を圧倒したのではないかと分析できる。
『とくダネ!』はマイケル急死の報道に明け暮れ、新聞テレビ欄で予告した自民党の動向、韓国の女優自殺に関するニュースはキャンセルされた。エンディングでは小倉が日本で販売開始された「iPhone 3G S」の実物を手にしており、借りてきた新型i Phoneを紹介したかったと裏話をして時間切れとなった。この事からi Phone関連のニュースも予定していたのが直前でキャンセルされたことがわかる。マイケルのニュースの他は9時15分頃から放送したVTR特集「とくダネ!プレミアム」と、終盤の天気予報程度だった。1994年に発生した松本サリン事件での、犯人と疑われた被害者家族の現在の心境を、インタビューを交えて放送した。フジテレビは26日の夜に松本サリン事件をテーマにしたドラマを放送する予定であり、特集の最後ではドラマの紹介を行っていた。6月26日は松本サリン事件の発生日ではないのでマイケル・ジャクソンのニュースに代えて後日改めて放送する方策も考えられる。ドラマのタイアップとしての宣伝効果を考えると、翌日以降に放送すると宣伝効果が失われる為、フジテレビとしてはどうしても放送したかったであろうと推測した。
私が午前7時に母から知らされたマイケルの訃報、アメリカのニュースメディアは概ね日本時間の午前5時半頃から「倒れた」「危篤」と報じて始めるが、死去の確認は7時20分頃にロサンゼルス・タイムスによるものだった。母というメディアは7時でマイケルが死んでいる。後日母に改めて訊くと、「7時になる数分前にテレビで死亡したと言っていた」と述べているが、確認が取れないのでなんとも言えない。
都合で視聴・録画することが不可能だったが、フジテレビは26日の午後7時から2時間の特別番組を放送したという。出演者は『とくダネ!』で顔を合わせた小倉・笠井・スペクターなど(出演者の情報はフジテレビのウェブサイトから)。私はラジオっ子で(別に不必要な宣言だけど)、26日は昼間にラジオを聴いていたが、マイケルの楽曲が集中的に特集されていた。リクエストやメールも彼に関するものが多かった。『とくダネ!』でも放送の合間に2曲、ミュージックビデオの”さわり”を放送したが、私にはそれがなんだか追悼の意を込めている様に感じられた。
マイケル・ジャクソンはアメリカ人であるが、ミュージックビデオの最初のスーパースターであり、日本人にも影響を与えた。
「少年への性的虐待」は裁判沙汰となるなど、常にゴシップの供給源でもあり続けたが、それは裏返せば人気があり、人々に愛されていたからではないだろうか。そして、その死因について、マイケルの子供の親権について、マイケルは死後もゴシップを供給する羽目になってしまう。私はその後のゴシップのような報道が続く事については織り込み済みだった。主役はマイケル・ジャクソンである、ゴシップは彼に関する人物を追いかけた。雑誌「SAPIO」は日本のマイケル・ジャクソンの報道の多さに不満を書いている。SAPIOの指摘のあるように否定的なコメントを載せているブログもある。是非とも同じ出版社から発行する「女性セブン」等の雑誌にも言及して頂きたかった。
アメリカ時間の6月25日はマイケル・ジャクソンだけでなく、女優のファラ・フォーセットも死去しており、両人への追悼特別番組が組み込まれている。私は大学へ向かい、11時過ぎに再びインターネットに接続するとまだ同時放送は継続されていた。KCBSの放送は姉妹局のKCALでの放送に切り替えられていた。
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